小鳥
小鳥といっても、セキセイインコ、オカメインコ、コザクラインコ、ボタンインコなどのインコ・オウム類から、文鳥や十姉妹などのフィンチ類など様々です。また、内臓も哺乳類とはかけ離れた違いを持っており、メスは卵も産みます。ですので、小鳥は哺乳類に置き換えて考えることはナンセンスで鳥類は鳥類として考えないと理解できない部分が多くあります。
食事について
小さい種子を食べます。基本的にはヒエ、アワ、キビ、カナリーシードの4種を混合して与えることで体を維持するための栄養は賄えます。最近はペットショップにセキセイインコ用、文鳥用などと個別の商品が並んでいますので自分で配合しなくても大丈夫なものが多数あります。他にもひまわりの種やソバや麻の実などもありますがそれらはおやつ程度に考えて頂いた方が良いです。摂取しすぎると肥満になったり脂肪肝になったりしてしまいます。
殻付きタイプと殻むきタイプのものがありますが、基本的にはどちらでもかまいません。よく殻付きでないとくちばしが伸び過ぎてしまうと言われますが、小鳥のくちばしは咬耗によって長さが調整されているわけではなく、自然に理想的な長さになっていますので大丈夫です。(もしくちばしが伸びてきた場合はウイルス感染やダニ感染や肝臓の病気が疑われます。ただし、猛禽類は咬耗によって歯の長さが調整されます。)ただ、小鳥たちにとっては殻をむいて食べる方が楽しそうに見えます。また、殻が剥いてあると腐敗しやすかったり、殻近くの栄養が製造段階でこそぎ落されている可能性もありますので、個人的には殻つきをおすすめします。
ペレットタイプも色々なものが有ります。栄養バランス的には混合種子を上回るでしょう。ですのでペレットを食べてくれる子はペレットを与えていった方が健康管理はしやすいでしょう。しかし、嗜好性が悪いので混合種子のみを与えていた子をペレット食に変えることはかなり困難を極めます。
補助食
上記の種子類だけですとビタミンA不足になります。(ペレットなら不足しません。)ビタミンAは欠乏すると毛並みが悪くなったり、足の皮膚がカサカサになっていきます。理想的にはビタミンAが豊富な種類の生野菜を毎日与えることですが、これも幼少期から慣れさせていかないとなかなか口にはしてくれません。ですので、生野菜を食べてくれない子には、小鳥用のビタミン剤(サプリメント)を水に混ぜるかフードの上に適量かけておく事で対応します。(野菜にはなるべくアブラナ科以外のものを与えた方が良いです。小松菜やキャベツ、チンゲン菜といったアブラナ科の野菜には鳥類では甲状腺を悪くする場合があります。大豆からできている豆苗も同様に甲状腺に悪影響を与えたり、発情を誘発することがあるので適しません。与えるのに適した野菜の例としてはサラダ菜、リーフレタス、春菊などがあげられます。)
カルシウムや塩分などのミネラルやヨードも必要です。鳥類は歯が無い為、食べ物はすべて丸飲みです。その食べたものは一旦腺胃という哺乳類と同様の胃で消化液と混ざりふやかされます、その後筋胃(砂肝)というところですり潰されます。その筋胃の中には小石が沢山入っておりその小石で食べ物をすり潰しています。その小石はどこから来るかというと鳥たちが自分で飲みこんで筋胃に溜まります。飼育下においてその小石に適したものは何かというと、ボレー粉、塩土、ミネラルサンドなどです。これらは食べ物をすり潰す時に少しずつ砕けて、やがてミネラルとして吸収されたり便に排泄されます。全て与えなければならないかというと、これには様々な意見があり何をどういったタイミングで与えるべきかはまだ結論は出ていません。ただ全てを与える必要はなさそうです。塩土は塩分の取り過ぎにもなるので与えるとしたら1週間に1〜2日程度数時間置いておく程度が目安で、全く与えなくても問題無いとも言われています。ボレー粉はカルシウム源にもなりますし、他のものと違ってヨードも含まれていますので足りない栄養素を補うのに最も適しているように思われます。ミネラルサンドはボレー粉を与えていれば必要な理由が見つかりません。最近の小鳥用の混合フード(シードミックス)の中にはボレー粉が適量入っているものも有るのでそういった物を使う場合は成長期や繁殖期のメスを除いて追加で与える必要は無いかもしれません。ボレー粉は胃内ですぐに消化されてしまうという話も聞きますが、ボレー粉しか与えていない小鳥のレントゲンを撮ると適量のボレー粉が筋胃の中にいつも蓄えられていますのでその心配はいらなさそうです。(※ボレー粉や塩土については色々な意見があり結論が出ていませんので絶対正しいわけではありません。参考程度にしてください。)
羽切り(クリッピング)
小鳥の羽を切って飛べないようにすることです。鳥は本来飛ぶ生き物だということで羽を切る事を話題にするだけでも不愉快に思われる方もいらっしゃると思います。ですので、ここでは長所と短所と注意点を述べるにとどめておきます。長所としては飛べなくなる事で逃走を防止出来たり人が世話をしやすくなる、鳥は自分の力で出来ないことも出てくるので人への依存性が高くなる、などといったことでしょうか。短所としては高いところから落下したときに怪我や骨折を起こしやすい、飛べないことをストレスに感じて自傷行為などをはたらくことがある、運動量が減るので肥満になりやすいなどです。
市販の飼育書にも切り方は書いてあるのでご自分で切られている方もいらっしゃると思います。しかし、大切なのは羽を切る場合は1回も飛んだことの無い子だけにしてほしいことです。飛んだ経験がある子は自分は飛べると思って高いところから飛び降りて落下する事故が多いからです。また、一旦切った羽も1年程度で生え換わるのでついうっかり羽のチェックをおこたるといつのまにか飛べるようになっていて、飛ぶのに慣れていないので壁にぶつかったりする危険があるので注意が必要です。(鳥は飛ぶ為の胸の筋肉が全く使っていなくてもムキムキに発達するようになっていますので、羽が伸びてくるといきなり飛びます。)
発情抑制について
メスで問題になることです。鳥はメス1羽だけで飼育していても食事や日照条件などがそろうと卵を産みます。短期間に1日1個ずつ程度のペースで数個産む事もあります。これが暖かい時期に卵を産む場合は問題になりにくいのですが、寒い時期に卵を産もうとすると卵管のなかで詰まってしまい自力で産めずにひどいと体力がもたず命を落とすケースもあります。ですので、秋から冬にかけては発情しやすい子は発情させない工夫をしないといけません。どういった事を心がけるかというと以下の通りです。
・明るい時間を短くする・・・明るい時間を10時間以内にします。(可能なら6〜8時間以内が理想です。)ただし、文鳥は明るい時間が短くなると逆に発情します。
・巣を入れない・・・鳥は木の上で立って寝ます。巣は卵を産む時以外は使いません。
・発情の対象を入れない・・・小鳥用のおもちゃが色々売っていますがおもちゃの中には発情対象になってしまう物もあります。発情しやすい子には全く入れない方が良いです。よくなついている人が発情の対象になっている場合もあります。その場合は、寒い間だけでもなついていない人に飼育を変わってもらった方が良いかもしれません。
・高栄養なフードを与えない・・・どんな動物でもそうですが食べるものが豊富ではない時期には繁殖はしません。普通の粗食にすることが良いです。
・部屋を暖かくしない・・・暖かいと発情が誘発されます。体調を崩さない程度に少し室温を下げましょう。
・青菜を与え過ぎない・・・野生では青野菜が豊富な時期に発情期が来ます。特に豆苗が発情を誘発する事が示唆されています。
最近は小鳥専門の病院もありまして、そういったところよりは専門性は劣るかもしれませんが自分で飼育したり鳥類の獣医学書物で勉強をしたりセミナー・学会に参加する事で診療レベルの向上を日々努めています。はじめに書きましたが鳥類はあくまで鳥類で、とても哺乳類の延長で診療できるものではありません。その事を念頭において日々診療にあたっております。