うさぎ
最近うさぎさんはわんちゃん猫ちゃんに次ぐ人気ペットの座を確保したように思えます。特に数年前のウサギ年に新しく家族として迎えられた方がとても多いように感じます。いるだけでみなさんの心をいやしてくれる存在ではないでしょうか。ただ、草食動物であるうさぎさんは飼い方を誤るとすぐに病気になってしまいます。しかし、逆に正しい飼い方をすれば滅多に病気にはなりません。あらかじめ飼育本を読まれている方にとっては知っていることも多いかもしれませんがみんなで少しここで勉強しましょう。
食事について
うさぎさんにとって、もっとも大切なことは食事です。うさぎさんの食べ物はペットショップに行くとやまほど種類があります。とくに豊富なのがおやつです。では何を中心にあげれば良いのでしょうか?
基本は牧草です。そして、牧草だけでは不足しがちな栄養素をペレットで補うのが良いです。おやつはコミュニケーションツール程度の認識にしておいた方が良いです。おやつには糖分やでんぷん質が多いですがそれらは量が多いと腸内の菌のバランスを崩して場合によっては重篤な腸炎になるケースもあります。
では、基本となる牧草についてもう少し触れておきましょう。牧草は色々な種類が売り場にはありますが大きく分けるとイネ科のものとマメ科のものの2種類になります。一般的にマメ科のものはアルファルファという牧草しかありません。他に売られている数種類の牧草は全てイネ科の牧草になります。イネ科の牧草の中でもっとも一般的なものがチモシーです。他の牧草は独特の香りがあったりクセがあったりしますので食べるのなら気分転換に別のものをあげてみては、という程度のものです。
では、マメ科とイネ科の使い分けについてです。簡単に言うとマメ科は高栄養食です、そしてイネ科は粗食です。しかしイネ科の牧草にはうさぎさんにとって最も大切な栄養素である食物繊維が圧倒的に多く入ってます。また、あまり摂取しすぎるといけない栄養素であるカルシウムがマメ科の牧草は多すぎます。カルシウムはあまり多量に摂取しすぎると膀胱結石が出来る原因になります。つまり、エネルギーやカルシウムを多く必要とする成長期や妊娠・授乳期はマメ科のアルファルファが適しており、それ以外の時期はイネ科のチモシーが最も適しています。
では、あとはペレットについてです。ペレットはあくまで足りない栄養素を補うためのものです。一般的にペレットはアルファルファが主原料で作られていることが多いです。ですので食べ過ぎると太ったり腸の動きが悪くなったり、膀胱結石が出来る原因にもなりかねません。ですので、体重の2〜5%程度を目安に1日にあげましょう。
歯について
うさぎさんの歯は、げっ歯類と異なり切歯という前歯だけでなく臼歯という奥歯も一生伸び続けます。上の食事の項目で牧草がメインということを述べましたが、食物繊維が腸の動きを調整するということ以外にもう一つ重要な事があり、それは臼歯を摩耗させて伸びすぎないようにするという事からも大切なのです。ペレットを食べる場合、臼歯は上下にしか動かしませんので摩耗しません。一方、牧草を食べるとき臼歯は横に動いてすり潰す様な動きをします、その時に臼歯は段々と擦り減っていくのです。臼歯は伸びすぎると頬や舌に接触し傷つけ痛みが出て食欲が落ちる原因にもなります。
最近、ペレットも大きく2つに分けられるようになりました。それはソフトタイプとハードタイプという分け方です。ハードタイプのものが最近出てきたのですが、非常に硬いため咀嚼回数が増え臼歯を摩耗させやすくする事が狙いのようです。しかし、あまりに硬すぎるので実は臼歯に無理をかけて臼歯の不正交合を促しているのではという事も最近言われはじめています。この件に関しては今後のさらなる報告を待つしかなさそうです。
爪切り・耳掃除
まず爪切りについてです。野生の状態ですと爪は適度に自然に削れて長くなりすぎることはありませんが、室内で大半の時間をケージで過ごすことが多い場合は爪はかなり伸び過ぎてしまいます。伸び過ぎるとケージのスノコの網目などにひっかけて折れてしまう事故が多いです。自分で噛んで短くする器用な子もいますが、大半の子は人が時々切ってあげなければなりません。タイミング的には一般的には1.5〜2カ月に1回程度でしょうか。自宅で切ることが難しければ病院で切ることもできますので遠慮なく御来院ください。(他に診察が無ければ爪切りの費用以外は頂いておりません。)
次に耳掃除についてです。うさぎさんは綺麗好きですので大体の子が自分で耳の手入れもできます。しかし、ロップイアー種で耳が垂れている子は自分でのお手入れが難しいようですぐに汚れが溜まっていきます。1か月に1回程度耳のお手入れをしてあげる必要があります。また、ロップイアーでなくても病気で頭が傾いてしまった子(斜頚)や前足に障害がある子(骨折など)も同様に自身でのお手入れが難しくなり汚れが溜まりやすいので注意が必要です。自宅で耳の掃除をすることが難しければ病院でも行えますので遠慮なくお越しください。(他に診察が無ければ耳掃除の費用以外は頂いておりません。)
避妊手術・去勢手術
まず、避妊手術(メス)から説明をします。ウサギさんは野生ではどちらかというと弱い方の動物になります。結果、肉食動物にいつも狙われています。そこでウサギさんがとった進化の道がすさまじい繁殖能力でした。肉食動物に狙われても沢山仲間がいるために絶滅せずに来ることが出来たのです。ただ、このすさまじい繁殖能力がウサギさんの雌の生殖器(子宮や卵巣)に負担をかけて、病気にさせてしまう事が多いのです。これは子供を作らなくても同じです。卵巣からはほとんど休みなく性ホルモンがでており、その性ホルモンが子宮や卵巣に無理をさせているのです。病気は高齢になるほど多くなりますが、早い子ですと2歳から子宮に癌が出来ることがあります。
病気になると子宮からは出血することが多いです。ウサギさんは人とは違って生理はありません。よって、陰部から出血した時点で子宮になにか病気があるかもと考えてもいいくらいです。(膀胱炎でも出血しますが少量です。)子宮の病気になった場合手術で悪いところを摘出することになりますが、すでに進行していて手術も出来ない位末期の病態になってしまってることも多いです。予防は、1歳までに避妊手術をすることです。内臓が完成する6か月以上でしたら手術できますので早めにしてあげましょう。(ウサギさんは内臓脂肪がとてもつきやすい動物で、1歳以上での手術はその内臓脂肪によってやや困難になります。)
次に、去勢手術(オス)についてです。女の子と同様、男の子も精巣が原因の病気になることがあります。最も多いものが精巣の癌です。ただ、女の子に比べるととても少ないです。また、女の子と違って男の子は精巣が外から触って調べることができるので異常があっても早期に発見する事ができやすいです。ですので女の子ほど積極的に手術をしましょうとは言っておりません。しかし、積極的にやった方がいいケースが時々あります。それはマーキングする子です。先生が昔飼っていた男の子はかなりマーキング癖が悪くて部屋中、布団中に尿をかけまくっていました。わんちゃんはしつけで何とかなる子もいますが、うさぎさんはしつけでマーキングをやめさせるのは非常に困難です。そこで何とかしようとなると去勢手術しかないのです。ウサギさんは去勢手術をするとほぼすべての子がマーキングをやめます。6か月前後になっていれば手術を行うことが出来ます。
抱っこについて
うさぎさんは基本的に足が地面から離れることをとても怖がります。これは本能的なものなのでしょうがないです。ですので抱っこはすこしずつ慣れさせながらでないと難しいです。抱っこが出来ないからこの子は慣れていないんだとは思わないでください。それが普通なのですから。人でも怖い事って沢山ありますよね、でも、慣れることで克服できるものも多いですよね。それと同じ要領でゆっくり焦らずやりましょう。
最後に
上にはあげておりませんがウサギさんはとてもストレスに弱い動物です。ストレスから食欲が低下したり、病気になってしまうことも多々あります。嫌がることをし過ぎない、怖がらせない、静かで落ち着ける場所を提供する、これが最も大切なことかもしれません。